実際にあった状態——タグ5つ、コンバージョン設定8本の乱立
調査で分かったのは次のような状態でした。心当たりのある会社は多いはずです。
- サイトの全ページに、過去の依頼先が設置したとみられる計測ツールのコードが5つ入っていた
- 広告アカウントには店舗ごとのコンバージョン設定が8本以上あり、動作していないものも多数
- どのタグが何のために入っているか、把握している人が社内にいない
- 一部の計測は動いており、完全に壊れているわけではない(だから誰も気づかない)
こうなる理由は単純で、広告代理店や制作会社を変えるたびに、新しい依頼先は前の設定を消さずに自分のタグを追加するからです。他社の設定を消して何かが壊れたら責任問題になるため、触らないのが業者側の合理的な行動になります。結果、タグは増える一方で、誰も全体を管理していない状態が生まれます。
何が実害なのか——数字が信用できなくなる
二重カウントで成果が水増しされる
新旧の計測が並存していると、1回のクリックや登録が複数のコンバージョン設定に同時に計上されることがあります。管理画面上は「成果が出ている」ように見えるため、実際より安い獲得単価だと誤解したまま広告費の配分を決めてしまうのが最大の実害です。
計測漏れと二重カウントが混在する
厄介なのは、全部が水増しされるわけではないことです。壊れて計測されていない店舗と、二重に数えられている店舗が混在すると、店舗間の成果比較そのものが意味を失います。「A店は好調、B店は不調」という判断が、実は計測の壊れ方の違いを見ているだけ、ということが起こります。
表示速度と管理コストもじわじわ蝕む
使われていないタグもページの読み込みごとに動くため、表示速度の低下要因になります。また、新しく計測を触ろうとするたびに「このタグは消していいのか」の調査から始まるため、放置期間が長いほど、次の改修の見積もりが高くなります。
実案件で行った整理の手順——「消す」のではなく「格下げる」
整理といっても、古い設定をいきなり削除するのは危険です。過去の成果データが参照できなくなったり、まだ生きている計測を止めてしまったりするからです。実案件では次の手順を取りました。
- 手順1: 棚卸し——サイト内の全タグと、広告アカウント内の全コンバージョン設定を一覧化する。どれが動いていて、どれが放置されているかをこの時点で確定させる
- 手順2: 統合先を1つ決める——既に全ページで正常稼働しているタグ管理環境を統合先に選ぶ。新しいコードをサイトに追加せずに済み、制作会社への設置依頼も不要になった
- 手順3: 共通のコンバージョンを1本作る——店舗別URLごとに設定を作るのではなく、「LINE登録リンクのクリック」という共通の基準で1本に集約。店舗が増えても設定を追加せずに済む
- 手順4: 旧設定は削除せず「サブ(モニタリング用)」に格下げる——広告の成果列に計上されるのは新しい1本だけになり、二重カウントが構造的に起きなくなる。旧設定の過去データは記録として残り、レポートで参照し続けられる
- 手順5: 実際にクリックして発火を確認——設定画面上の完了ではなく、実サイトでのテストクリックが計測に届くことを確認して完了
ポイントは手順4です。「メインを1本にし、旧設定は観測専用に格下げる」方法なら、過去の数字を失わずに二重カウントだけを止められます。サイトに古いコードが残っていても、成果列には影響しない構成にできます。
「タグが設定されていません」警告に慌てない
整理後、お客様から「広告の管理画面に『タグが設定されていません』と表示されている。問題ないのか」というご質問をいただきました。実はこの警告、計測が壊れているという意味ではありません。
この案件では、タグ管理ツール経由の正しい構成で計測が動作しており、コンバージョンも実際に記録され続けていました。表示されていたのは「Googleが推奨する新しい設置方法に切り替えませんか」という案内であり、従来方式で正しく計測できていても表示されるものです。
広告管理画面の警告・推奨表示には、対応必須のものと案内にすぎないものが混在しています。見分ける確実な方法は、表示の文言ではなく「コンバージョンが実際に記録されているか」を実数で確認することです。判断がつかない警告を根拠に高額な改修を提案された場合は、まず実測の確認を求めてください。
自社でできるセルフチェック3つ
外注する前に、現状の危険度は自社でもある程度確認できます。
| チェック項目 | 確認方法 | 危険信号 |
|---|---|---|
| タグの数 | 無料のブラウザ拡張機能(Tag Assistant等)で自社サイトを開く | 把握していないタグが2つ以上ある |
| コンバージョン設定の数 | 広告管理画面の「コンバージョン」一覧を見る | 使っていない設定・最近の計測がゼロの設定が残っている |
| 数字の整合性 | コンバージョン数と、LINE登録者数など実際の増加数を月単位で突き合わせる | 計測値が実数の1.5倍以上、または大幅に少ない |
1つでも当てはまるなら、広告費の増額より先に計測の整理をおすすめします。整理のような単発作業の費用感は業務自動化の費用相場ガイドを、ツール導入の失敗パターン全般はRPA導入の失敗事例集もあわせてご覧ください。
広告費を使う前に、計測の健康診断を
「成果の数字が合っているか自信がない」という段階のご相談で構いません。タグと計測設定の棚卸し・整理から、月次の計測監視まで対応します。広告費の判断は、正しい数字があって初めて機能します。
AIに30秒で試す →よくある質問
Q. 古いタグやコンバージョン設定は削除してもらったほうがよいのでは?
最終的には撤去が理想ですが、順番が重要です。先に「メインの計測を1本化し、旧設定をモニタリング専用に格下げる」ことで二重カウントは止まります。そのうえで、影響がないと確認できた古いコードから段階的に撤去するのが安全です。いきなり削除から入る提案には、壊れたときに戻す手順があるかを確認してください。
Q. 依頼先を変えるとき、計測が壊れないようにするには何を引き継げばよいですか?
最低限、タグ管理ツールと広告アカウントの管理権限を自社名義で保持し、新旧の依頼先には自社から権限を付与する形にしてください。加えて「現在動いているタグと設定の一覧」を納品物として受け取っておくと、次の依頼先が調査ゼロから始めずに済み、乱立の連鎖を断ち切れます。
Q. 店舗ごとにコンバージョン設定を分けるのは間違いなのですか?
間違いではありませんが、店舗別のURLごとに設定を量産する方式は、店舗の追加・変更のたびに設定作業が発生し、乱立の温床になります。実案件では「登録リンクのクリック」という共通基準の1本に集約し、店舗別の成果はキャンペーン単位で見る構成にしました。店舗が増えても設定を触らずに済む形を先に作るのがおすすめです。
Q. 整理を依頼すると費用はどのくらいかかりますか?
規模によりますが、棚卸しから統合・動作確認までの単発整理で1〜数万円台、その後の計測監視を含む月次サポートで月1〜2万円程度が弊社の目安です。判断材料として、月の広告費に対して計測が1〜2割狂っていた場合の損失額と比べていただくと、整理費用の妥当性を評価しやすくなります。
