何が提出されたのか(条例案の要点)
報道(共同通信 2026年9月14日配信)によると、三重県議会に提出された条例案の骨子は次のとおりです(出典: 三重県、カスハラ条例案を提出 全国初の罰則付き(共同通信))。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出日 | 2026年9月14日、三重県議会の本会議に提出 |
| 対象行為(特定カスハラ) | 正当な理由なく、長時間や繰り返しといった形態で金銭・物品・謝罪・面会を要求する行為。大声で従業員に著しい不安を抱かせる行為。みだらな言動。付きまとい |
| 手続き | 知事が禁止命令を出し、それでも改善されない場合に罰則 |
| 罰則 | 50万円以下の罰金、または拘留もしくは科料 |
| 施行目標 | 2027年4月 |
一見勝之知事は「就業者の安全確保を図り、地域経済の健全な発展を実現するものだ」と述べています。
ポイントは、いきなり罰則が適用されるのではなく、知事の禁止命令が先に出て、その命令に違反した場合に罰則がかかる二段構えになっている点です。暴行や脅迫のように刑法で対応できる行為ではなく、「違法とまでは言い切れないが、繰り返されて従業員が辞めてしまう」ような行為を、行政の命令という形で止めに入れるようにした制度と読めます。
これまでの自治体条例との違い
カスハラ防止条例は、2024年10月に東京都が全国に先駆けて成立させ、2025年4月1日には北海道と群馬県でも施行されています。ただし、これらは事業者や住民の責務を定める理念型で、違反者への罰則はありません。
| 自治体 | 施行・成立 | 罰則 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 2024年10月成立 | なし | 全国初の防止条例。理念型 |
| 北海道・群馬県 | 2025年4月1日施行 | なし | 理念型 |
| 三重県桑名市 | 2025年4月1日施行 | なし(氏名公表あり) | 加害者の氏名公表、弁護士相談・訴訟費用の補助(最大10万円) |
| 三重県(条例案) | 2027年4月施行目標 | 50万円以下の罰金・拘留・科料 | 知事の禁止命令に違反した場合。都道府県として全国初 |
三重県が罰則付きに踏み切った背景には、県が2025年春に県内事業者を対象に行った調査があります。過去3年間にカスハラ被害を受けた経験のある事業者は14.2%にのぼり、従業員の長期休業や離職といった被害が実際に起きていることが確認されました(出典: 飲食店ドットコム ジャーナル)。
国の義務化との役割分担
企業側の対策については、国の法改正がすでに決まっています。2025年6月に改正された労働施策総合推進法により、カスハラ防止のための措置が事業主の義務となり、2026年10月1日から施行されます。方針の明確化、相談体制の整備、被害を受けた従業員への配慮、再発防止といった措置が求められます。
- 国の法律(労働施策総合推進法):事業主に「従業員を守る体制」を義務づける
- 三重県の条例案:悪質な加害者に対して、知事の命令と罰則で行為そのものを止める
つまり企業にとっては、「体制を整える義務」と「悪質な行為を行政に止めてもらえる仕組み」の両方が揃うことになります。ただし、県が禁止命令を出すには、どのような行為が、いつ、誰に対して行われたのかという事実の把握が前提になります。企業側に記録がなければ、条例の仕組みは動きません。
中小企業がいま準備すべき5点
三重県内に事業所がある会社はもちろん、他の都道府県でも同様の条例が広がる可能性を踏まえ、次の5点を優先することをおすすめします。
- 1. 方針の明文化と周知:カスハラを許容しないこと、対応した従業員を会社が守ることをA4一枚でよいので文書にし、朝礼やメールで周知する
- 2. 相談窓口の設置:責任者1名と連絡先を決め、従業員が一人で抱え込まない体制を作る
- 3. 記録の仕組み:電話の録音、対面時のメモ、経緯の時系列記録を、その場で残せるようにする。県への相談も労働局への対応も、記録が出発点になる
- 4. 対応基準の共有:正当なクレームと特定カスハラの線引き、警察や県への相談に切り替える基準を、現場が迷わない形で決めておく
- 5. 被害を受けた従業員のケア:担当を外す、産業医や外部相談につなぐといった手順を決めておく
特に3の記録は、2026年10月の義務化対応と、三重県条例のような「行政に止めてもらう」仕組みの両方に効きます。メモより録音、録音より自動で文字起こしされて改ざんできない形で残る仕組みの方が、後から証拠として使いやすくなります。
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- 改ざんできない記録保存:日時・相手・発言・対応を時系列で保存。県への相談、労働局への説明、弁護士への相談で「出せる記録」になります
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今後の見通し
条例案は9月の三重県議会で審議され、可決されれば2027年4月に施行される見込みです。全国初の罰則付き条例として注目度が高く、他の自治体が追随する動きも予想されます。三重県の審議状況と、国の義務化に関する指針の公表は、引き続き一次情報で確認することをおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度の内容や施行時期は審議や運用により変わることがあります。実際のご対応にあたっては、三重県・厚生労働省の公表する最新の一次情報や、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
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Q. 三重県以外の会社にも関係がありますか?
直接の対象は三重県内での行為ですが、企業に対策を義務づける改正労働施策総合推進法は全国一律で2026年10月1日に施行されます。また、罰則付き条例は他の自治体が追随する可能性があり、記録と相談体制の整備はどの地域でも必要になります。
Q. 罰則は企業側にもかかりますか?
報道されている条例案の罰則は、知事の禁止命令に違反した加害者(カスハラを行った側)に対するものです。企業に対する罰則は含まれていません。ただし、企業には国の法律で対策を講じる義務が別途課されます。
Q. 正当なクレームまで「特定カスハラ」になりませんか?
条例案は「正当な理由なく」「長時間や繰り返し」といった形態で要求する行為や、大声・みだらな言動・付きまといを対象にしています。内容が正当な指摘であっても、手段が著しく不相当であれば対象になり得る一方、通常の苦情や要望は対象になりません。線引きの基準を社内で共有しておくことが重要です。
Q. 記録は何をどのくらい残せばよいですか?
日時、相手、場所、発言や要求の内容、対応した従業員、対応内容を時系列で残すのが基本です。電話は録音、対面はその場のメモと直後の記録、メールやチャットは原文の保存が有効です。自動で文字起こしされ改ざんできない形で保存される仕組みがあると、後から証拠として使いやすくなります。
Q. 導入にIT導入補助金は使えますか?
使えます。カスハラ対策AIプラットフォーム「カスハラ」は本体・初期設定・保守サポートがIT導入補助金2026の登録ITツールです。弊社はIT導入支援事業者として申請手続きの分担にも対応します。対象になるかどうかの一次確認はテキストのやり取りだけで行えます。
