2026年度改定の要点——地方の引き上げ幅が都市部を上回る
- 引き上げ目安:Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円(都道府県のランク別)
- 目安どおりなら全国加重平均は1,121円→1,176円(+55円、4.9%増)
- 今回は地方(B・Cランク)の引き上げ幅が大都市圏(Aランク)を上回る構造。地域間格差の是正と地方の人手不足が背景
- この後、各都道府県の地方審議会で正式決定され、例年10月頃に発効する
正式な金額と発効日は都道府県ごとに決まるため、自社の所在地の発表を必ず確認してください。重要なのは、引き上げ自体はもう既定路線だということです。「いくらになるか」を待つのではなく、「どう吸収するか」を今から決めるのが経営の仕事になります。
自社の負担増を3分で試算する
計算はシンプルです。時給引き上げ額 × 月間労働時間 × 対象人数。
例:時給が最低賃金付近のパート10名、1人あたり月100時間勤務の場合
55円 × 100時間 × 10名 = 月55,000円、年間66万円の負担増
(社会保険料の事業主負担分も連動して増える点に注意)
見落としがちなのが「玉突き」の昇給です。最低賃金付近の時給だけ上げると、少し上の層との差が縮まり、不公平感からベテラン層の時給も上げざるを得なくなる——実際の負担増は単純計算より大きくなるのが通例です。
第3の吸収策:事務時間の回収——シフトを削らずに利益を守る
人件費増への対応は、①価格転嫁、②シフト・人員の削減、が定番ですが、②は人手不足の現場では現実的でなく、サービス品質の低下を招きます。弊社が勧めるのは③「同じ人数のまま、時間あたりの付加価値を上げる」——つまり、事務・管理のムダな時間を回収して、その分を売上を生む仕事に振り向けることです。
- 勤怠集計・給与前処理:タイムカードの手集計をテンプレート化・自動化(タイムカード集計の自動化)。皮肉なことに、最低賃金対応で最も工数が増えるのもこの給与まわりの事務です
- シフト表の作成・共有:作成と個別連絡の自動化で店長・管理者の時間を回収
- 請求・発注・日報の転記:紙とExcelの二重入力をやめる(二重入力をなくす方法)
- 回収の目安:管理者1人あたり月10〜30時間。時給換算すれば、パート数名分の引き上げ額を吸収できる規模です
人件費が4.9%上がるなら、時間の生産性をそれ以上に上げればよい——単純ですが、これが人を減らさずに利益を守る唯一の算数です。人手不足で倒れる会社との分かれ目もここにあります(人手不足倒産2026上半期)。
10月までのスケジュール——今から間に合う手順
- 8月:試算と棚卸し。負担増を計算し、管理者・事務の作業を書き出す(自動化する業務の見つけ方)
- 9月:1業務の自動化と就業規則・給与規程の確認。効果の大きい事務作業1つを自動化。時給改定の給与計算への反映方法も準備
- 10月:改定発効。新時給での給与計算初月は検算体制を厚くする(ここも自動化されていれば負担は最小)
- 業種別の賃金助成(業務改善助成金など、設備投資と賃上げをセットで支援する制度)の対象になる場合は、公式の最新要件を確認する
最低賃金は毎年上がり続ける前提で経営計画を立てる時代です。今年の+55円を「コスト」で終わらせるか、「業務を見直すきっかけ」に変えるかで、来年以降の耐性がまったく違ってきます。
10月までに「時給が上がっても利益が減らない」体制へ
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Q. 2026年度の最低賃金はいつから適用されますか?
中央審議会の目安答申(2026年7月28日)を受けて、各都道府県の地方審議会が正式な金額を決定し、例年10月頃に都道府県ごとに発効します。発効日は都道府県で異なるため、自社所在地の労働局の発表を確認してください。
Q. 月給制の正社員にも影響はありますか?
あります。月給を所定労働時間で割った時間額が最低賃金を下回ってはならないため、初任給付近の月給は確認が必要です。また最低賃金付近の時給層を引き上げると、その上の層との差を保つための玉突き昇給が起き、給与体系全体の見直しにつながることが多くあります。
Q. 賃上げに使える助成金はありますか?
事業場内の最低賃金引き上げと設備投資(業務効率化への投資を含む)をセットで支援する業務改善助成金などの制度があります。対象要件・上限額・締切は年度ごとに変わるため、厚生労働省の公式情報で最新の要件を確認してください。賃上げと自動化投資を同時に行う場合は特に相性の良い制度です。
